労働問題・労務トラブルの対策
企業が従業員を採用し、継続して営業活動を営んでいくにおいて、労働問題をいかに防ぐかは非常に重要なテーマとなります。
なぜなら、従業員とのトラブルが訴訟等に発展した場合、対応のために多くの時間・労力を割く必要が生じることに加え、企業の信用失墜等にもつながる可能性が否めないからです。
企業・従業員との間の労働トラブルには実にさまざまなケースが存在しますが、以下、代表的な労使トラブルである、①労働時間・残業に関する問題、②ハラスメントに関する問題、③賃金に関する問題、④退職・解雇に関する問題について解説していきます。
労働・残業時間に関する問題
従業員に対して、残業を行わせるためには、「36協定」を締結し、業務上の必要性が認められる場合には、従業員に残業を命じることができる旨を就業規則にて規定する必要があります。
(36協定) 労働基準法36条を参照すると、法定の労働時間を超えて労働させる場合、または、法定の休日に労働させる場合には、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。この協定のことを36協定といいます。 |
もっとも、36協定を締結した場合であっても、原則として月の労働時間の上限は45時間となります。
※特別条項というものを締結した場合には、一時的に上記上限を超えることもできますが、あくまでも一時的なものです。
したがって、企業としては、従業員に対して、労働基準法上認められた労働時間を超えた労働を強いることが無いように、以下のような対策を行う必要があります。
①ノー残業デーの実施
週に1回程度「ノー残業デー」を設け、その日は定時に退社することを社員に対して奨励する制度です。
一般的には、週の中日に当たる水曜日をノー残業デーとして設定しているケースが多いようです。
もっとも、制度としてノー残業デーを設けたものの、実際は精度が形骸化しているケースも散見されますので、日頃から従業員の労働時間を把握し、必要に応じて業務の分散等を行うなどの対策が必要となります。
②勤怠管理システムの導入
勤怠管理を社員の自己申告で行っている企業は、労働時間を記録する勤怠管理システムを導入しましょう。
従業員の労働時間を正確に把握し、これに紐づいた残業代の支払いを徹底することによって、いわゆるサービス残業の防止につながるとともに、残業時間の多い従業員を把握し、業務分担の見直し等を行うことによって、従業員の残業時間を減らすことが期待できます。
ハラスメントに関する問題
昨今、さまざまなハラスメントが類型化され紹介されておりますが、以下、職場における代表的なハラスメントである①パワーハラスメント、②セクシュアルハラスメントに焦点をあて、その対策について解説をしていきます。
①パワーハラスメントとは
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、3つの要素を全て満たすものをいいます。
代表的なケースとしては、上司が部下に対して人格を否定するような発言を行う、特定の労働者を職場で孤立させる、特定の労働者に対して嫌がらせ目的で過大な仕事を与えるといったものが挙げられますが、これ以外にも、パワハラに該当するケースは多数存在します。
②セクシュアルハラスメントとは
職場におけるセクシュアルハラスメントは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。
例えば、特定の従業員に対して性的な事実関係を尋ねたり、従業員の身体に必要なく接触する行為はもちろん、従業員の容姿に関する発言を行うことや、食事に執拗に誘う行為などもセクハラに該当し得ます。
③ハラスメントを防止するために
ハラスメントを防止するためには、個々の従業員の意識改革が非常に重要となります。
例えば、定期的な説明会を実施したり、コンプライアンス相談窓口を設けたり、社内へのポスター掲示等を行うことにより、従業員の意識を抜本から改革し、ハラスメントの発生を防止するようにしましょう。
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